CEO対談

社会の持続的な成長と企業価値の向上を目指して

社会の持続的発展に貢献しながら、企業価値を高めるための課題とは―。
ESG投資家の動向などに詳しい株式会社インテグレックスの秋山をね代表取締役社長と、当社代表取締役社長の森川宏平が2018年6月、当社本社にて語り合いました。

ESG投資の潮流と企業の持続可能性

写真:対談

秋山:投資家がESGの観点から企業を評価する動きが加速しています。きっかけは2006年に国連が提唱した責任投資原則(PRI)で、投資の意思決定プロセスにESGの観点を反映することを宣言するものです。多くの機関投資家がこれに署名し、署名機関の運用資産総額は80兆ドル規模といわれています。環境、社会、ガバナンスがすべての企業の共通の課題であり、持続的成長に大きな影響を与えると認識されています。

森川:化学産業は、自然界に存在しないものを生み出しています。それ故その責任も大きく、持続可能な社会の構築に向けて、業界を挙げた取り組みを早くから進めています。当社でも、化学物質の開発~廃棄・リサイクルに至るすべての過程で「環境・安全・健康」を自主的に確保するレスポンシブル・ケア(RC)活動に、1995年から全社を挙げて取り組んでいます。

秋山:以前の企業の環境への取り組みは、自社の事業活動が環境に与える負荷を抑えることが中心でした。数年前から、自社の製品やサービスなどの提供を通じての貢献が注目されています。

森川:社会の変化に伴って、求められるものも変わってきています。現在のグローバル社会の要請のひとつが、持続可能な開発目標(SDGs)の達成への貢献です。世界が2030年に達成すべき17の目標が掲げられており、当社グループが目指す方向とも合致しています。製造業である以上、「12.つくる責任つかう責任」は当然に果たします。さらに、気候変動・資源枯渇、人口構造の変化などの社会的な課題の解決につながる製品やサービスの供給・開発に取り組んでいます。

昭和電工グループの環境と社会の取り組み

写真:対談

秋山:環境を例にすると、どのようなことに取り組んでいますか。

森川:一例が、プラスチックケミカルリサイクル事業です。アンモニアの原料である水素の安定供給にあたって、使用済みのプラスチックを原料とすることで化石燃料の使用を抑制でき、工程で発生するCO₂も炭酸ガスやドライアイスとして再利用できます。なにより、家庭から発生するプラスチックごみの処理にも貢献できます。
鉄スクラップを溶解する電気炉に使用される黒鉛電極は、鉄のリサイクルに貢献する製品です。鉄鉱石から新しく鉄を作り出す場合と比較して、鉄スクラップを再生すると約75%のエネルギー消費削減につながります。

秋山:そのような開発・製造を通じて、これからの地球、社会、人類の未来に貢献できるという意識を若い人たちが持つことができれば、働きがいにもつながってきますね。

森川:当社の使命とは、全てのステークホルダーを満足させることにあります。主役となるのは従業員であり、働きやすい環境を提供していくのが経営としての役目だと考えています。当社グループ働きがい調査を定期的に実施しており、抽出された課題に対する施策を全社的に展開しています。また、自分の考えを直接、従業員に伝えていくことも経営トップとしてのミッションのひとつと考えており、国内外の拠点を訪問する都度、従業員との対話の時間を設けています。
さらに、製造など現場作業を伴う職場にも女性の配置を行ってきました。柔軟な勤務制度の導入、休憩室などの施設の整備など、従業員が働きやすい職場づくりを進めています。障がい者雇用についても、従業員の特性を活かせるような職域を開拓し、多様な人材がいきいきと働くことのできる組織づくりに取り組んでいます。

秋山:昨今では働き方改革にも注目が集まっています。いかに効率的に働き、自分の時間を持てるか、やりがいを持てるかということが課題です。

森川:生産性を向上させることで、必然的に残業時間は減っていきます。当社では2009年より、中長期的な全社目標のもと、労働組合とも連携し、事業場ごとに労働時間削減に取り組んでいます。全社目標とは、①年間720時間を上回る時間外労働を行う従業員ゼロ、②総実労働時間2,000時間未満、③いわゆる36協定の特別条項の上限時間の原則60時間以下、のことです。工事・修繕などの繁忙が避けられない製造現場でも目標達成を実現したいと考えています。

秋山:昭和電工グループは、有機から無機、アルミに至るまで数多くの事業部門を擁していることが特長だと思います。それぞれの分野の専門家が「化学反応」を起こして新しいものを生み出すということが強みではないでしょうか。

森川:特に研究開発部門では事業をまたがっての交流を進めています。ノーベル賞を受賞した江崎玲於奈氏は、理想的な研究組織の状態を「組織化された混沌」と表現しています。個々の研究者は好きな研究をしているが、研究所全体としては同じベクトルを向いている状態です。理念や考え方を共有することが重要ですね。

ものづくり企業として共有する価値観

秋山:昭和電工グループは海外に積極的に展開し、海外の従業員の割合がおよそ4割になると伺っています。文化的背景や宗教などが多様化するなかで、どのような価値観を共有しているのでしょうか。

森川:世界最高品質の製品を世界最高の効率でつくる、というのが私たちの目指すところです。また、ものづくりの企業である以上、コンプライアンスや労働安全、品質が全ての基本であるという価値観は同じと考えています。①安全やコンプライアンスなどに対する感度を持つこと、②「問題がある。不安全だ」と言える職場環境を築くこと、③問題があるのではないかとの声が挙がった時に素早く対処し、改善につなげる風土をつくること。これらを国内外のグループ会社にも徹底していきたいと考えています。コーポレートガバナンスを利かせるという点で、当社グループが目指す方向性などを理解してもらう重要性が増しています。

秋山:サプライチェーンでの取り組みについてもESG投資家の関心が集まっています。

森川:原材料を調達するお取引先に対して、CSR調達に取り組んでいます。ガイドラインを定め、その遵守をお願いするとともに、お取引先での自己診断やお取引先への訪問を通じて、現状の確認や改善につなげています。2010年からの累計で378件のお取引先を訪問し、コンプライアンスや事業継続計画(BCP)といった観点から対話を行っています。サプライチェーンの各段階でCSRの取り組みを推進することで、社会課題を解決する力が大きくなっていくと思います。

社会に価値を提供しながら企業価値の向上を目指す

秋山:着実な取り組みを推進されていますね。

森川:世界最大の投資家である年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が2017年7月に選定した3つのESGに関わる指標のすべてに採用いただきました。また、当社は「健康経営優良法人~ホワイト500~」に2年連続で選定されたほか、「プラチナくるみん」の認定もいただいています。当社のこれまでの取り組みを評価していただいたものと受け止めています。

秋山:GPIFは国民の将来にそなえた資金を運用しているため、ESGの取り組みに注力している企業を選ぶことで、持続可能な投資を図っています。企業として最も大切なことは、ESGと事業との関係を的確に把握し、中長期の成長戦略に組み込んで、投資家にストーリーをもって語るということです。昭和電工グループの場合は、黒鉛電極事業がモデルケースになるでしょうか。事業の強みを活かしながら、社会全体のCO₂の排出量の削減に貢献し続けるといった取り組みを増やすことで、ESG投資家に評価されることにつながると思います。

森川:従業員一人ひとりが一流になることでシナジーも一流のものが生まれ、事業も一流になると考えています。事業が一流であるということを、私たちは「個性派事業」と呼んでいます。「営業利益率10%以上」「営業利益の額が数十億円以上」「景気変動に左右されない競争優位性」の3つの条件を満たすのが個性派事業であり、私たちの成長の源泉というべきものです。個性派事業を磨き、持続可能な社会の構築に貢献できる製品やサービスを生み出しながら、当社の持続的成長と企業価値の増大に向けて突き進んでいきたいと思います。

ページトップへ