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ニュースリリース

多層カーボンナノチューブを用いた石油資源探査・採掘用超高性能複合ゴム超過酷環境下での油田開発の実証実験に成功

昭和電工株式会社が参加する信州大学工学部 遠藤守信教授を中心とする研究開発グループが、本日「多層カーボンナノチューブを用いた石油資源探査・採掘用超高性能複合ゴム超過酷環境下での油田開発の実証実験に成功」について共同で記者会見を行いましたので、お知らせします。

2009年8月25日

 

多層カーボンナノチューブを用いた石油資源探査・採掘用超高性能複合ゴム 超過酷環境下での油田開発の実証実験に成功、 世界初、前人未到の超高温・超高圧油田に到達!!

研究開発グループ;信州大学・遠藤教授、日信工業株式会社、株式会社フコク、シュルンベルジェ株式会社、昭和電工株式会社、MEFS株式会社

 国際石油価格は堅調であるものの、遅かれ早かれ世界規模で需給が逼迫してくることが予想されている。この問題を克服するためには、既存の油田からの回収率を向上させること、および未開発の海底油田開発を促進することが必須であり、関連素材技術のイノベーションが熱望されている。

 昨年当グループでは、表面構造を制御した多層カーボンナノチューブ(CNT、VGCF®昭和電工製)を複合化のフィラーに用いることで、260℃, 240MPaの革新的耐久性を有する超高性能ゴム複合材シール材の開発の成功し発表した(注1)。今回、昨年開発したゴムシール材の温度特性をさらに改善し、実際の油井での使用条件を加味し、高温のみならず低温でも機能する複合シールを開発できた。かねてより本新開発のCNTゴム複合シール材を用いて実際に海外の最過酷条件下の海底油田において実証実験を実施し、従来のシール材では不可能であった目標性能の達成を確認した。新開発のCNT/ゴムシール材が、革新的性能を有することが証明された。これは、石油資源、エネルギー問題を大きく緩和するもので、石油資源をほとんど保有しない我が国にとって、石油掘削技術における貢献は資源の供給に寄与する上で戦略的意義がある。
 現行でも260℃で機能するシール材は存在するが、海底油田など低温での性能も求められる環境下では、十分なシール性を確保できず液漏れを起こしてしまうなどのシール機能に問題があった。高温-低温、高圧下で機能する新開発の超高性能ゴムシール材の技術の成功で、可採埋蔵量を現在の約2倍に拡大させ、採掘の寿命を約80年延長することが可能である。併せて将来我が国で期待されている科学調査掘削の分野や、日本近海のメタンハイドレート資源採掘にも広く寄与するものと期待される。近々、共同研究パートナーであるシュルンベルジェ社を中心に実用化プログラムの準備に入る予定である。実証試験二箇所の詳細は次の通り;
・メキシコ湾の海底油田: 温度 235℃以上,圧力 180MPa以上,総深度 9,000m以上
・北海の海底油田: 温度 190℃以上,圧力 95MPa以上,海底 600m,総深度 約4,000m

表1に示すように、新開発ゴムシール材のみが要求(海底温度4℃~260℃、圧力240MPa以上)を満たすことができた。この結果、新開発ゴムシール材が超過酷な石油開発環境(特に低温から高温までの広範囲と高圧力)に耐えることが証明され、実際の石油採掘現場での本格的な実用化が可能になった。今年中に開発品の量産体制を確立していく。今後はカーボンナノチューブの優れた耐高温高圧特性を活かし、当複合ゴムの新たな応用分野へと開発を進める予定である。

表1 ゴムシール材の要求性能とその新開発シールと現行シール材の試験結果

特性 耐低温/℃ 耐高温/℃ 耐圧力/MPa 説明
要求されている性能 4 260 240
CNTを用いた開発品 0 260 240 諸要求を実現
既存品 1 60 260 140 低温と耐圧力が不十分
既存品 2 0 175 140 高温と耐圧力が不十分

 本研究は、信州大学(1)(2)(3)、シュルンベルジェ(株)(1)(世界トップの油井探査会社)、日信工業(株)(1)(3)、(株)フコク (1)、昭和電工(株)(1)、MEFS(株)(1)(3)による共同研究の成果である。用いた研究費は(1)NEDO大学発事業創出実用化研究開発事業(代表,遠藤,担当 野口)、(2)科研費特別推進研究(代表,遠藤)、(3)知的クラスター創成事業(コーディネータ,森本)での府省連携型の研究成果である。

 

  • ※1M. Endo et al., Adv. Funct. Mater. 18, 3403 (2008) .

以上

◆ 連絡先:
遠藤守信(信州大学工学部・教授,カーボン科学研究所・所長)
Tel; 026-269-5201, Fax; 026-269-5667
E-mail; endo@endomoribu.shinshu-u.ac.jp

(ご参考)
MEFS(メフエス)株式会社ホームページ: http://www.mefs.co.jp/