社外取締役座談会

顧客の「こころ」や「社会」を動かす企業の経営と哲学

当社は3名の社外取締役体制となっており、尾嶋正治氏、西岡潔氏に加え、2019年3月には一色浩三氏が新たに就任されました。今回、3名の社外取締役にさまざまな観点から意見をいただきました。

昭和電工の企業文化・印象

写真:対談 堅苦しさがなく、感じたことをそのまま発言できる文化が根付いている 西岡

西岡:非常にフラットでオープンな会社だと感じています。社内では、役職など立場に縛られず、互いに「さん付け」で呼び合うことが習慣となっています。とくに取締役会はどの会社も往々にして堅苦しいものですが、当社はその堅苦しさがない。感じたことをそのまま言える素晴らしい文化が根付いています。

尾嶋:確かに議論のしやすさは実感しています。市川現会長が社長時代から雰囲気づくりに意識をむけられていましたし、西岡さんのおっしゃる「さん付け」文化もそうした空気の醸成に一役買っているように思います。私も研究者・技術者であった経験に立って、自由に発言させてもらっています。

一色:私は日本開発銀行時代に当社を担当していたので馴染みがあり、当時は名門企業らしい落ち着いた雰囲気が印象的でしたが、2019年3月から社外取締役として関わり、ずいぶん変わったと感じました。お二人がおっしゃるとおり、取締役会での質疑応答の闊達度は、上場企業の中でも代表選手になれるほどだと感じています。

尾嶋:ただ、取締役会にあがってくる議題については、結論だけでなく、経営会議での経緯がわかる情報もバランスよく開示してもらえると、一層議論が深まってよいと思います。経営会議にまで参加すると言うと嫌われそうですが(笑)。

一色:そうですね。賛成・反対の両意見をもとに議論を進めるほうが、判断の拠り所も増えますし。私は、取締役会で経営トップがコンプライアンスという言葉を頻繁に発していることも印象的でした。

西岡:確かに。コンプライアンスに対して非常に意識が高いことは間違いありませんね。ただ、コンプライアンスの問題は、あらゆる面から出てきます。私は、製鉄会社で研究開発、製造、営業と一連の事業を経験してきましたが、安全、品質、環境など事業を取り巻く全てに目を配る必要があります。また全社員がコンプライアンスを意識しなければ問題はどこからでも発生しますから、トップの発信が全社員まで浸透するための、さらなる工夫や施策に期待しています。

一色:個人的な見解になりますが、人材育成のベースにコンプライアンスがあると思えてなりません。コンプライアンスは平たく言えば、誠実であることです。その価値観を中心において社員も組織も動く。個々の社員がそうなる力をつけることで、変化の激しい社会で将来どのような事業が主流になったとしても、持続可能な企業になることができるのではないでしょうか。

社会との関わり、社会への貢献

写真:対談 社会と共生し、化学で課題を解決するという企業哲学が全社員に浸透すれば、もっと社会に貢献できる 一色

尾嶋:当社はグループ経営理念で「社会的に有用かつ安全でお客様の期待に応える製品」を提供すること、「国際社会の一員としての責任を果たす」ことを掲げています。当社が生産する黒鉛電極は、スクラップ鉄を再生させる電気製鋼炉に使われています。また使用済みのプラスチックを化学原料にリサイクルする事業なども手掛けており、こうした事業の価値をさらに向上させています。これはまさにESGですが、アピールがあまりうまくない。また、今後のオープンイノベーションによる研究開発はSDGsにも貢献していくものと考えています。

一色:当社はいま、社会との接点をできるだけ厚くし、共生していこう、ということに力点を置いています。その中で持ち上がった社会のニーズに対して、時には他の産業と融合して、化学で解決していこうとしています。トップはメディアを通して自ら語っており、また、同様に考える社員が増えてきている印象です。こうした企業哲学が末端まで浸透すれば企業として強くなり、社会に大きく貢献できる。この動きを止めることなく進めてほしいです。

西岡:社会との関係を大切にしている姿勢は、2018年12月に発表した新中期経営計画「The TOP 2021」で明確にしていますね。また今回、グループ経営理念を実現するため、新たに、Mission(使命・存在意義)、 Vision(目指す姿)、 Value(Vision実現の手段)を定めましたが、Valueは「CUSTOMER Experience(顧客体験価値)の最大化」としています。これは、本当にお客様のことを知っているのか、ということです。みな知っているつもりにはなっていても、本当に理解できているケースは多くない。今回、顧客体験価値という言葉を打ち出したのは、まさに社会との関わりを深める、つまりは本当にお客様が必要な製品を提供するという意志の表れにも感じます。

尾嶋:私は、今回のMission、Vision、Valueは非常にわかりやすいキーワードになっていると思いました。しかも、その実現に向けて全社一丸となって進んでいる印象です。また、森川社長がおっしゃっている「組織化された混沌」は激動の時代における当社のあるべき姿を示していると思います。

一色:私が当社を担当していた30〜40年前と比べて、一味違う企業に成長したと、とくに感じるのが、こうした言葉の掲げ方です。Vision(目指す姿)として謳う「個性派企業」やコーポレート・メッセージである「動かす」といった、シンプルだけど明確な意味合いを持ったワードを用いて、想いを会社の隅々にまで周知できるように、繰り返し指導しているように感じます。結果、会社中が意思を共有できる。それが可能な心象形成が育まれています。しかもそうした力強いワーディングが、会社を飛び出し、地域との繋がり、社会貢献という次元まで接点を伸ばしているのは、他社にはない大きな強みです。

西岡:企業が世の中の役に立つことに領域の制限はありませんから、他のどの会社にもないお客様の役に立つ商品を提供することを第一に、積極的に取り組んで欲しいですね。

尾嶋:研究開発戦略では「融合」という言葉を使い、すでに大学などと積極的にオープンイノベーションを図り、ワンランク上の研究開発をやっている。その点は非常に巧みに取り組んでいる印象です。全般的に研究開発には優秀な人材が多く、がんばっていると思いますが、変化の激しい社会に対応した研究開発をと考えると、まだまだ人員も予算も少ない。ここにはもっと力を入れ、研究開発型企業を目指してほしいと思います。

当社グループのMission/Vision/Value
コーポレート・メッセージ 「動かす」

社外取締役の役割

写真:対談 我々の使命のひとつは、次世代のリーダーを育成して世代交代を後押しすること 尾嶋

一色:社外取締役の代表的な責務は、個人株主の代弁者であろうとする姿勢です。会社との接点が多く意見を言いやすい機関投資家や金融機関、大株主とは異なり、個人株主は会社に物申す機会が限られています。彼らの代理人として発言していく。これが重要ですし、続けていかなければなりません。また、先述のとおり、将来、主業が変わっていく可能性も否定できません。会社の継続的な発展のためにも、新しい分野を開拓できる優れた人材がそろう会社、人材の宝庫だと言われる会社の実現に、貢献していくつもりです。

西岡:社内にいると気付けないことは多々あります。それを外からの視点でアドバイスする。これが私の任務だと思っています。会社にいると同じようなことを考え、同じように行動するようになりがちです。この会社の常識は、実は常識ではなかった。そうした気付きを提供したいと考えています。加えて、私も含め社外取締役は、各地の事業所を回り、現場の皆さんと対話する機会をもらっています。リアルな声を聞き、想いや温度を感じて、経営トップの意向や企業哲学がどう浸透しているか確認し、経営への助言に生かしていきます。

尾嶋:おふたりもおっしゃったように、株主の付託の下、独立した客観的な知見で経営に対して監視、監督、助言をする。これが与えられた使命です。同時に後継者の育成、見抜きも社外取締役の重要な役目と自覚しています。持続可能な経営を担う経営者の世代交代を、客観的な立場で後押しすることになる私たちの役割は大きいといえます。また経営トップだけでなく、リーダーとなり得る人材がどこにいるのかといった点にも目を向け、社外取締役としての役目を果たしていきたいと考えています。

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