化学品管理

基本的な考え方・方針

私たちは、「コンプライアンスの徹底」や「プロダクトスチュワードシップの推進」により、安心・安全を提供します。そして、製品の潜在リスクを未然に捉え、自律的かつ自主的に管理することを通じて、未来に向けた新たな価値を創造することを目指しています。また、化学品管理と安全性評価のプロフェッショナル人材が継続的に育成・創出される仕組みをつくり、化学品管理に関わる全ての取り組みが効果的に遂行されるよう、体制・基盤作りを促進し、使命の実現に向けて取り組んでいきます。

推進体制

2社の統合に際し、化学品管理統括組織が新規に設置されました。本組織が一体となって、グローバルな推進体制を構築し、法規制対応、リスクマネジメント、グローバル統制、安全性評価などにおけるPDCAサイクルを活用して持続的な改善を図っています。

戦略

  1. 1. グローバルガバナンス強化

    「化学品管理ネットワーク機能の構築」、「グローバル化学品管理規程類の制定」、「統合化学品管理システムの構築」や、「RHQを介した統括連携」により、国内外のガバナンスをさらに強化し、化学品管理コンプライアンスを徹底します。

  2. 2. プロダクトスチュワードシップの推進

    「化学品リスク評価の継続的な実施」、「製品に対して行う安全性評価レベルの向上と安全性情報の拡充」を通じて、ステークホルダーに支持される安心・安全でサステナブルな価値を提供します。また、資材調達活動においては、 当社「グリーン調達ガイドライン」に基づき、より環境負荷の少ない物品・サービスの調達を推進しています。

  3. 3. 教育・人材育成

    場所・時間問わず希望者の受講を可能にするeラーニングやオンラインセミナー等の提供、レゾナックグループ内の人的交流や専門研修を軸とする化学品管理プロフェッショナル育成プログラムを推進します。

  • RHQ=Regional Headquarter(地域統括会社)

目標

マテリアリティに対するKPIとして、下記を掲げて取り組みを進めています。

重要項目(KPI)の目標と実績

重要項目(KPI) 2025年目標 2022年実績
プロダクトスチュワードシップ推進 優先評価対象物質のリスク評価実施率100%(国内グループ連結) 優先評価対象物質のリスク評価実施率100%(旧昭和電工単体、68物質)
  • 当社が選定した物質を対象として安全性要約書を発行することにより評価

化学品管理体制の強化

グローバルトップクラスの機能性化学メーカーにふさわしい化学品管理体制構築を目指し、2022年は、旧昭和電工と旧日立化成の各社のうち化学品管理対象となる国内外関係会社を確定し、各事業場に化学物質管理責任者を選任するなどによりグローバルガバナンス体制の基礎を構築しました。これまで、ガバナンスの根幹となる新会社の規程類を整備・公開し、両社統一基準による化学品管理監査の実施、各種教育の実施、グローバルコミュニケーションハブの基盤となる化学品管理ポータルサイトの立ち上げなどを進め、化学品管理体制をさらに強化させています。

また、2020年から開始した国内事業場での化学品リスク評価の改善活動を継続し、化学品リスク評価の側面からも全社的な化学品管理体制の強化を進めています。

化学物質に関する国内外法規制対応

レゾナックでは、国内外の化学物質規制動向を常に注視し、各国法規制の順守を図るとともに、化学物質総合管理システムを活用し、製品、原料および化学物質に係るコンプライアンス確保に積極的に取り組んでいます。各国法で要求される製造/輸出数量管理などについては、本システム内の集計機能と基幹システムを連携させることで、信頼性、透明性の高い集計を行い、国内外の行政機関への報告に活用しています。グループ内では、本社と各事業場との連携を密にして課題や情報などを共有し、コンプライアンス違反の未然防止に努めています。

  • 国内法規制:化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)・労働安全衛生法(安衛法)・毒物及び劇物取締法(毒劇法)・化学物質排出把握管理促進法(化管法)などの法規制について、化学物質総合管理システムを活用し、体系的に法順守を推進しています。また、化審法については、レゾナックとして全社一元管理体制を適用し、コンプライアンスの強化を図っています。
  • 海外法規制:欧州(REACH:Registration, Evaluation, Authorisation and Restriction of CHemicals)、米国(TSCA:Toxic Substances Control Act)、アジア(中国 新化学物質環境管理弁法、韓国 化学物質の登録及び評価に関する法律)等の海外各国・各地域法令については新設や改正が頻繁に行われており、今後規制がますます強化または拡大される傾向にあります。各種情報源およびデータベースを活用して改正動向を監視し、当該国の現地関係者との情報共有により、適切かつタイムリーに対応を進めています。

製品の安全性・法規制情報の管理体制

当社は、化学品管理の基本インフラとして「化学物質総合管理システム」を整備し、活用しています。
本システムは、主に化学品管理に関連する化学物質の情報と各国の化学物質法規制情報のデータベース(DB)で構成され、それらの情報・データを活用し、実務を遂行するための機能を搭載しています。

本システムにより化学物質の原材料や自社製品情報を管理しています。個々の化学物質に対して、化学品管理部が有害性情報および法規制情報を広範に調査し、専門的に評価することにより、高い質を確保しています。
また、各国の化学物質法規制DBをタイムリーに更新し、収載する情報を定期的に見直すことで、最新情報を維持しています。更に、社内基幹システムやSDS(安全データシート)管理DBと管理システムとの連携や相互補完関係も整備しています。この、高品質な情報と最新の規制情報とを基盤とする本システムの機能を活用し、コンプライアンスを確保した効率的・効果的な法対応業務を行っています。
例えば、さまざまな条件で物質や製品を容易にリスト化できる抽出機能を活用することで、各国の法改正などへの適切な対応を行い、管理システムの集計機能と社内基幹システムを連携させることで国内外の製造・輸入数量管理や届出に活用しています。また、SDS作成機能を活用し、法令に準拠したSDSの作成・提供を行っています。

世界各国で化学物質に係る法規制の制定や改定の動きが加速している中、自社のコンプライアンスのみならず、お客さまのビジネスのサプライチェーンを構成する一員としての責任をしっかりと果たすため、今後も本システムの強化、拡充を図っていきます。

製品情報の収集と提供

当社では、化学物質総合管理システム収載の情報に基づき製品のSDSを作成しています。国内版および海外版のいずれのSDSにおいても、各国の法的要求事項の情報を収集し、各国法令に準拠したSDSを作成しており、社内の審査・決裁を経て、お客さまに提供しています。
なお、2021年10月に公布された化学物質排出把握管理促進法(化管法)の政令改正に伴うSDSの改訂は、2022年末までに対応を完了しました。

また、プロダクトスチュワードシップ推進の一環として、当社において優先的に評価する化学物質(自社優先評価対象物質)を選定して順次リスク評価を行い、その結果をステークホルダーに公開する取り組みを積極的に実施しています。2022年は、昨年に引き続きリスク評価に注力し、事業場の自律自走を目指し、事業場と協力してリスク評価の向上に取り組みました。特に、自社優先評価対象物質については、36件についてリスク評価を実施し、評価実施率100%を達成しました。その結果を記載した安全性要約書を新規作成し、(一社)日本化学工業協会(日化協)が提供する化学物質リスク評価支援ポータルサイト「JCIA BIGDr(ビッグドクター)」に公開しました。これにより、当社は日化協より、その年に最も多くの新規安全性要約書を公開した企業に贈られるJIPS賞大賞を2021年度に引き続き2022年度も連続で受賞しました。本取り組みによる社内外のリスクコミュニケーションの活性化と社内の貢献意欲向上が、今後のプロダクトスチュワードシップ推進の原動力となっています。なお、安全性要約書については、下記リンクをご覧ください。

  • 日本化学工業協会(日化協)により、化学品管理の自主的かつ自律的な取り組みの一環である安全性要約書の公開において顕著な活動を行った会員企業に授与される賞。

ナノ材料のリスク管理

当社では、数多くのナノ材料を取り扱っています。原材料として、また製品として取り扱うすべてのナノ材料のリスク評価を行い、作業者およびお客さまの安全と健康、環境への配慮を行うナノ材料の安全管理体制を構築し、2017年から運用を開始しています。ナノ材料のリスク評価及び安全管理は、「ナノ材料安全管理要領」に則って実施しています。
ナノ材料について適切な管理がなされていることを、管掌役員を議長とするナノ材料安全対策協議会にて定期的に確認し、事業/開発の継続可否について経営会議に上程、経営会議にて決定しています。

教育

化学品管理においては、これを支える従業員一人ひとりが社内教育等を通じて、コンプライアンス確保と製品を正しく取り扱う知識を身につけることが重要となります。
当社では、社内教育プログラムの充実と体系的な教育システムの構築に取り組んでいます。継続的な教育の実施により、化学品管理への感度、意識、知識の向上を図り、化学品管理に係るコンプライアンス違反の未然防止に努めています。
例えば、社内教育プログラムの一環として、化学品管理概論、化審法、安衛法、毒劇法、海外法規制および危険物輸送、SDS、化学物質リスクアセスメントに係るセミナーを開催しています。日本化学工業協会によるケミカルリスクフォーラムの社内配信など、外部のセミナーの導入も併せ、学習機会の最大化を図っています。また、事業部・事業所の化学物質管理担当者を対象とした説明会を実施し、各法令上の対応事項や社内規程類の周知・教育を行っています。これらすべてをオンラインで実施することで、場所の制約なく、多くの従業員が知識向上に努めることができるようになりました。

安全性評価における動物実験に対する配慮

当社では、コンピューターによる毒性予測評価(in silico)や、培養細胞や試薬を利用した代替試験法(in vitro・in chemico)といった動物実験代替法を積極的に活用しています。また、段階的なアプローチで安全性評価を実施することで、実験動物の使用を可能な限り最小限に抑えています。

当社では社会的に有用で安全・健康・環境に配慮した製品を提供し、グローバルな法規制要件に適合した適切な化学品管理を行うため、実験動物を使用した製品の安全性評価を、外部機関を利用して実施しています。その際は、当社は、動物実験における3Rの原則(Replacement:代替法の活用、Reduction:使用数の削減、Refinement:苦痛の軽減)を尊重し、「動物の愛護および管理に関する法律」に基づき運営される外部機関に動物実験を委託しています。