中期経営計画「プロジェクト・スプラウト」の進捗状況について (骨子)
2003年12月10日
昭和電工株式会社(大橋光夫社長)は、事業構造改革を主眼とした前中計「チータ・プロジェクト」の完遂を受け、本年より、2003年~2005年をターゲット期間とし、「成長戦略事業」の育成・強化による「個性派化学の確立」を目標とする新中期経営計画「プロジェクト・スプラウト(以下「スプラウト」)を推進いたしております。
「スプラウト」では、成長戦略事業の育成に向け、「無機・アルミと有機の技術融合」を推進力として、成長が期待される「ITネットワークライフ」、「カーライフ」、「アメニティーライフ」の3市場に向け、12の具体的な「戦略的市場単位(SMU)」を設定しました。当社は、これらの戦略的市場単位をターゲットとする「SMUプロジェクト」に資源を集中し、個性的で競争力を持つ高付加価値製品を育成強化することにより、「個性派化学の確立」を図ります。
以下に、HD(ハードディスク)事業・石油化学事業の構造改革進展、成長戦略事業育成事例等、「スプラウト」初年度の成果と、2005年目標達成に向けた戦略をご紹介申し上げます。
記
Part I 進展した体質強化
1.2003年業績見通し (2003年8月12日発表)

当期末に2円の復配予定(2004年3月)
2.大幅な収益力向上 (2003年の予想数値は8月12日発表済み)
- 1)営業利益 スプラウト初年度の利益計画を達成できる見込み。 営業利益予想380億円 (2002年313億円、スプラウト計画値376億円)
- 2)売上高営業利益率
構造改革、高付加価値事業の拡大により営業利益率が向上。 2003年予想 5.5% (2002年 4.6% )
3.コストダウン
スプラウト初年度目標を上回る110億円を達成の見込み
主要項目

4.有利子負債: スプラウト初年度も順調に削減。
2003年の有利子負債削減額予想額 495億円
Part II スプラウト:戦略的事業展開
1. 昭和電工の基本戦略
既にご説明済みですが、当社は、「個性派化学の確立」による収益力向上に向け、事業ポートフォリオを、成長戦略、基盤、再構築の3種類に区分し、各ポートフォリオの役割と、ポートフォリオ内の個別事業戦略を明確に定めました。
当社は、全事業で徹底したコストダウンを推進しつつ、中長期的視野に立ち事業構造を改革する戦略的事業展開を進めます。特に、SMU戦略により成長戦略事業を大きく伸長させます。SMU:戦略的市場単位(Strategic Market Unit)
2.HD 世界最高水準の技術力を背景に事業構造改革
販売政策の転換 | 内製メーカー主体から非内製メーカー主体へ販売先を変更 |
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戦略的提携・買収 | 三菱化学の事業を買収 (シンガポール拠点確保・増設) 台湾トレース社から優先販売権取得 (製造技術供与) これにより、外販メーカーとしてトップシェアへ (最大830万枚/月)。 |
需要・用途の大幅な拡大 | (非PC用途) DVDレコーダー、カーナビ、MP3プレーヤー -> HD外販メーカーとして事業基盤の飛躍的強化に成功 |
3.石油化学 戦略的提携とコストダウン
- (1)大分エチレンクラッカーの高稼働体制を確立
アセチル事業の強化 協和発酵工業との酢酸エチル生産合弁会社を設立
-> 安定したエチレン需要源の確保ポリエチレン事業の統合 日本ポリエチレンを設立(国内最大) - (2)コストダウン
2003年30億円を達成、2005年までに計50億円のコストダウンを実行し、アジア最強のコンビナートを目指す。
主な内容: クラッカー低廉原料使用、ユーティリティ設備の燃料多様化、
アセチル新製法の触媒性能向上
4.電子・情報 成長への着実な布石
(1)アルミ高分子固体コンデンサー | 生産能力を倍増中 (第2ライン増設) 新グレード(薄型・高品位・高容量)を市場投入 |
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(2)化合物半導体 | 超高輝度 LEDチップ(赤、橙)に事業参入 |
(3)VGCF® | リチウムイオン電池向け好調で能力増強を検討 信州大学遠藤教授と応用開発ベンチャーを設立 |
(4)半導体用特殊ガス | 次世代半導体製造用エッチングガスC4F6の本格販売を開始 |
(5)CMPスラリー (化学的機械的研磨材) | 次世代型デバイス対応、生産能力を増強 |
(6)レアアース | 中国・包頭の新工場、試運転開始(日中2拠点体制) |
5.アルミニウム 最適生産体制の構築と高付加価値化
成長戦略事業・基盤事業
(1)ショウティック® | 技術・品質の優位性により過去最大の販売量達成 |
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(2)LBP用感光ドラム | 大連に新工場建設(日米中4拠点化) |
(3)熱交換器 | 海外への生産移管を推進 |
(4)コンデンサー用高純度箔 | 堺分社化によるコストダウン (トップシェア) |
(5)高熱伝導性アルミ板(ST60) | PDP市場拡大により大幅伸長 |
(6)アルミニウム缶 | ボトル缶事業に参入 (市場分野拡充) |
再構築事業
(1)汎用板 | 堺分社化によるコストダウン |
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(2)押出品 | 拠点集約(3→2拠点)と押出機削減 |
(3)スカイアルミニウム | 古河電工軽金属部門と経営統合 |
6.化学品 選択と集中
- (1)特殊化学品
医農薬中間体 新製品を欧州向けに販売開始 微粉含有樹脂 光触媒酸化チタンマスターバッチの用途拡大 - (2)農薬・防疫薬
SDSバイオテック 宇部興産より農薬3剤を譲り受け
微生物殺菌剤の国内独占供給権を取得 - (3)基礎化学品
アンモニア 容リ法プラスチック原料設備完成 エピクロルヒドリン 事業撤退、ダイソーへ営業譲渡
7.無機材料 生産体制の再構築
(1) 汎用セラミックス研磨材・研削材 (電融アルミナ、CBN、SiC) |
中国への生産移転によりコスト競争力を強化 |
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(2)人造黒鉛電極 | 日米2拠点体制によるシナジー発揮でコスト競争力強化進展 世界的な需給タイト化 |
(3) フェロクロム | 国内フェロクロム事業より撤退、生産子会社(周南電工)を解散 |
Part III SMU:成長戦略のキーコンセプト
1.SMU:戦略的市場単位(Strategic Market Unit)
成長戦略事業の育成強化を担うSMUプロジェクトは、3大成長市場に設定した12のSMUに対応する事業部横断型プロジェクトです。当社は、SMUプロジェクトを成長戦略事業拡大のための成長エンジンと位置付け、資源の集中投入を行っています。
2.SMUプロジェクトとそれを支える技術群
12のSMUは、市場分析と、当社が持つ個性的技術をベースとする強みの分析の両面から検討を加えて設定しました。無機・アルミから有機の技術領域に27のテクノロジー・プラットフォーム(TPF)を設定、SMUプロジェクトが抱える技術課題をTPFが解決することで、成長戦略事業強化のスピードアップを図っています。
3.『売り手の視点』から『お客様の視点』へ
従来、当社は、主に『売り手の視点』での事業展開を行い、ターゲットとすべき事業領域の絞り込みが不十分でした。「スプラウト」では、『お客様の視点』の発想に切り替え、ターゲット市場を12のSMUと定めました。当社は、お客様のご要請に多様な技術の融合による個性的製品の開発でお応えし、個性派化学の確立を図ります。
4.SMUプロジェクトによる成長戦略事業拡大の具体例
成長戦略事業拡大の具体例を紹介いたします。
- (1)電池材料SMU:市場情報共有と技術融合
電池材料SMUプロジェクトでは、リチウムイオン電池、燃料電池、太陽電池の市場に電池容器、電解質、負極材、セパレーター、電極材料の製品化テーマを設定し、市場情報の共有と技術融合により、アルミラミネート、導電性高分子、セパレーター、気相法酸化チタン等、当社固有材料を用いた個性的製品の事業化に成功しています。 - (2)VGCF® (電池材料SMU)
気相法炭素繊維VGCF®は、リチウムイオン電池市場の拡大により需要が拡大しており能力増強を検討しています。当社は、気相法炭素繊維の権威である信州大学遠藤守信教授と、カーボンナノファイバーのベンチャー企業、MEFS(メフエス)を発足させ、VGCF®等先進炭素材料等の新規用途開発のための受託研究を開始しました。 - (3)酸化チタン:『市場からの発想』で活かす素材の強み
当社は、高誘電・UVカット・光触媒等の優れた機能を持つ微粉酸化チタンを有しており、SMUプロジェクトによる酸化チタンの市場開発を推進中です。ライフサイエンスSMUプロジェクトでは、光触媒機能に着目し繊維メーカー等との共同開発を進め、化粧品原料SMUプロジェクトでは、UVカット機能に注目し被覆酸化チタンを化粧品メーカー向けに販売中です。 - (4)高純度C4F6を本格販売 (半導体プロセス材料SMU)
LSI市場での線幅の微細化要求に対応し、半導体プロセス材料SMUプロジェクトでは、線幅90nm以細の超微細加工用ドライエッチングガスC4F6の化審法(注)の認可を取得し国内初の量産を開始しました。C4F6は、微細加工に対応した優れたアスペクト比と高い選択性を有し、また、大気寿命が2日以下と短く従来品比環境負荷が極めて低いガスです。注.化審法:化学物質の審査及び製造等の規則に関する法律 - (5)超高輝度LEDチップへの参入 (情報通信デバイスSMU)
当社は、AlInGaP(アルミニウム・インジウム・ガリウム・リン)系四元LEDチップの当社従来比3倍の高輝度化に成功し、超高輝度LEDチップ市場に本格参入します。超高輝度AlInGaP系4元LEDは、赤色~黄緑色系波長の高輝度用途に用いられ、InGaN系LEDの青色~緑色との組み合わせにより、自動車、屋外ディスプレー、携帯電話、信号機等に用途が拡大しています。 - (6)アルミ固体コンデンサー本格展開 (コンデンサー/材料SMU)
アルミ高分子固体コンデンサ-は、低い電気抵抗と高い耐熱・難燃性を持つ小型高容量コンデンサーで、PCのCPU回りの電源等に用いられます。
当社は、本コンデンサーの需要拡大に対応して、米国ケメット社との提携関係を強化し、前工程の当社への集約と、第2生産ラインの設置による能力倍増を決定しました。併せて、薄型高容量化への市場の要請に応え、当社従来比2倍の高容量グレードの投入を行いました。
5.研究開発費 成長戦略事業に集中投入
・スプラウト初年度(2003年)の研究開発費構成比
成長戦略事業(SMU)50%、基盤事業26%、再構築事業24%
Part IV 変革し続ける昭和電工
1.意欲と能力ある『個』にインセンティブ
新人事制度の導入(2004年より)
- ・管理職へ年俸制を導入、『職務』と『成果』に基づく報酬へ
- ・「職務毎の基本年俸+成果による業績年俸」
- ・定期昇給の廃止
- ・事業部門業績を賞与に反映(管理職より実施)
2.加速する中国戦略
昭和電工 | (2000年) 上海 | 現地法人 |
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昭光通商 | (2001年)上海 | 現地法人 |
2.加速する中国戦略
- (1)ビジネスサポート拠点
昭和電工 (2000年) 上海 現地法人 昭光通商 (2001年)上海 現地法人 - (2)製造拠点
半導体用除害装置 (1999年)上海 顧客立地 樹脂(BMC注,ビニルエステル樹脂) (2000年)上海 顧客立地 注.昭和高分子の不飽和 ポリエステル樹脂系成形材料。 半導体用特殊ガス (2003年) 上海 顧客立地 - (3)進行中のプロジェクト(製造拠点)
レアアース 包頭 原料立地 (試運転開始) 感光ドラム 大連 顧客立地 (試運転開始) 研削材・研磨材 連雲港 原料立地 (試運転開始) - (4)3.2004年のコストダウン
スプラウトでは、3年間に総額200億円のコストダウンを計画。内、2004年のコストダウン計画合計 50億円 (内訳) 製造 25億円 購買 15億円 SCM・物流 10億円 - (5)
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4.有利子負債を引き続き削減
有利子負債残高 | |
2002年末 | 5,811億円 |
2003年末予想 | 5,316億円 |
2005年末スプラウト計画 | 5,200億円以下 |
(D/Eレシオ 3倍未満へ)
2005年末までにさらなる圧縮を目指し、ポスト・スプラウト
ご参考 セグメント別売上高・営業利益推移
(単位:億円)
注.各年のスプラウト計画値は2002年1月発表済み、2003年予想は2003年8月発表済み。
当社は、「プロジェクト・スプラウト」で定めた戦略の完遂により「個性派化学の確立」による企業価値の増大を図り、経営理念の実現を目ざします。