ニュースリリース
高熱伝導・高強度アルミ板材「ST60」で新グレード品を開発
- 加工性と強度の高さで筐体需要に対応 -
2016年4月25日
昭和電工株式会社(社長:市川 秀夫)は、高熱伝導・高強度アルミニウム板材「ST60」の新グレード「ST60–HSM」*を開発し、量産販売に向け、今月よりサンプルワークを開始しました。本製品では従来グレードと同等の曲げ加工性と熱伝導性を持ちながら、アルミニウム合金A6061**に匹敵する高強度を実現しました。
「ST60」シリーズは2001年に当社が開発したアルミニウム板材です。純アルミニウム並みの放熱性(熱伝導性)と、構造材として代表的なアルミニウム合金A5052***と同等の強度を兼ね備えた同シリーズは、発売以来、曲げ加工性の高いグレード「ST60-T3」は電子機器内部の放熱板に、高強度グレード「ST60-T8」は金属ベース基板やスマートフォンの部品に主に採用されてきました。
近年、スマートフォンやタブレットなどの携帯端末では強度や意匠性の点から、ハイエンド品からミドルレンジ品にまで金属筐体の採用が進み、特にアルマイト加工の外観の優位性からアルミニウム製の筐体が増えています。「ST60」シリーズも筐体用途としてすでに採用実績はあるものの、さらなる強度向上のニーズを受け、今回サンプルワークを開始した「ST60-HSM」では、「ST60-T3」の加工性を持ちながら「ST60-T8」以上の強度を実現しました。同製品の引張強さはA5052以上のA6061に匹敵し、当社は同製品を市場投入することにより、同シリーズの筐体としての採用拡大を目指します。
電子材料分野では、機器および部品の小型化・高集積化により、軽量かつ高強度で放熱性の高い部材が求められています。当社は今後も、長年培ってきた合金設計技術とアルミ加工技術によってお客様の期待に応えてまいります。
以上
- *HSMはHigh Strength Metalの略
- **A6061…6000系はマグネシウムとシリコンが添加されたアルミニウム合金の系統。高強度で耐食性・切削加工性に優れていることから、構造用材に使用される代表的な合金である。A6061は銅等を添加することで強度を高めており、溶体化・焼入れ・時効処理によりさらに高い強度が得られる。
- ***A5052…5000系はマグネシウムが添加されたアルミニウム合金の系統。A5052はアルミ合金の中で中程度の強度を持ち、代表的な材料として知られている。耐食性・耐海水性・溶接性に優れ、船舶材料や車両部品、建築用内外装などに使用される。
グレード一覧(数値は代表値)
グレード | 引張強さ (N/mm2) | 耐力 (N/mm2) | 伸び(%) | 加工性 | 熱伝導率 (W/m・℃) | 導電率(%) | 推奨用途 |
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ST60-HSM | 300 | 280 | 8 | 曲げ加工可能 | 204 | 54 | スマートフォンの筐体など |
グレード | 引張強さ (N/mm2) | 耐力 (N/mm2) | 伸び(%) | 加工性 | 熱伝導率 (W/m・℃) | 導電率(%) | 推奨用途 |
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ST60-T8 | 260 | 235 | 8 | 抜き加工可能 | 211 | 56 | プリント配線基板、スマートフォンの部品(ボタン、カメラレンズ枠など) |
ST60-T3 | 200 | 180 | 10 | 曲げ加工可能 | 215 | 57 | 大型放熱板(液晶FPD用バックパネル、ヒーターカバー)、小型放熱板(カーナビ、ゲーム機などの内部シャーシ)など |
シャーシ、基板での加工例

各種金属類との比較

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