データの収集から整形、蓄積、AI解析まで、一気通貫して行えるデータパイプラインを構築

~電子実験ノートを活用、運用開始1年弱で製品開発期間を2ヶ月短縮した事例も~

2022年11月02日

昭和電工株式会社(社長:髙橋 秀仁)は、実験の生データを入力する電子実験ノートから、データを活用するマテリアルズ・インフォマティクス(MI)ウェブアプリまでを一気通貫で接続し、MIアプリからAIモデル構築に使用された生データまで容易にアクセスできる機能を実装したデータパイプラインを他社に先駆けて構築しました。

電子実験ノートを活用することで、従来はAIモデル構築時のデータ整形作業で失われてしまっていた定性的な情報も見ることが可能になりました。MIアプリを管理するデータサイエンティストがAI予測結果に疑問を持った場合、容易に生データまでさかのぼって確認しデータの異常等をより素早く発見できるようになります。また、以前構築したMLOps(機械学習オペレーション)を活用して、電子実験ノートに入力した情報を自動でAIモデルに取り込む機能も実装しており、研究開発者は、常に最新のデータを反映した精度の高いMIアプリを使用することが可能となりました。

当社はこのようなMIアプリを含むデータパイプラインを活用して材料開発を迅速化し、市場のニーズにこたえる高付加価値製品を提供していきます。

MIキープレイヤー30機関に挙げられるなど世界的プレゼンスを確立

当社は材料開発において、過去の実験データに基づいて作成したAIモデルにより、さまざまな条件で素材を混ぜ合わせた場合の特性を予測する機能や、求める特性を実現するための配合条件を提案する機能等を持つ独自のMIアプリを開発しています。ほぼ全ての事業部門でこのMIアプリを日常的に研究開発の現場で活用しており、Materials Informatics’ Key Players※1の30機関として挙げられるなど、世界的プレゼンスを確立しています。

リンクをクリックするだけで生データにアクセス

当社は今回、電子実験ノート「BIOVIA Notebook」※3と実験データベース管理システム、MIアプリを接続することで、データの収集から整形、蓄積、AI解析まで、一気通貫して行えるデータパイプラインを2021年12月に構築しました。

このデータパイプラインでは、MIアプリ上に表示されるリンクをクリックするだけで、電子実験ノートに格納されている生データに容易にアクセスすることができます。これにより、MIアプリを管理するデータサイエンティストが、物質の性質を表すスペクトルデータや分子構造を表す画像など、データ整形時に失われてしまう定性的な情報を確認してAIモデルの生データの妥当性を判断、取捨選択して、その場でAIモデルの精度向上を図ることが可能です。

最新の実験データをMIアプリに自動反映

さらにMLOpsの仕組みを活用して、電子実験ノート上のデータを自動で整形してAIモデルに取り込む機能を実装しています。研究開発者が情報を電子実験ノートにアップロードするだけで、自身がデータ整形やAIモデルの検討などに手を煩わせることなく、常に最新の実験データを反映した、精度の高いMIアプリを使用することができます。

開発期間を約2ヶ月短縮した事例も

データパイプラインの運用開始からまだ1年以内であるにもかかわらず、開発期間を短縮できた事例が出ています。例えば電子機器向けで強粘着性と易剥離性の両機能が求められる粘着剤では、トレードオフの関係にある「粘着力」と「糊残り」の特性の両立をめざした開発を行っています。データパイプラインのMIアプリを活用し、有望と思われる配合に絞って検討を行うことで、実験回数を従来の1/3程度に減らすことができ、実験に要する時間を3か月から1か月へと、約2か月間短縮することができました。

電子実験ノート普及の後押しにも

データパイプラインの構築により、当社グループ研究開発者への電子実験ノートの普及が一段と進み、2022年9月時点で電子実験ノートのID数は約400、2023年には約700に増加する見込みです。

  • 当社、電子実験ノート普及担当者のコメント

「実験データは会社の重要な技術資産であり、情報の蓄積・共有・継承・活用の観点から、電子実験ノートへの蓄積が有効と考えています。化学業界では他社でも導入に苦労されているお話をよく伺います。当社でも研究者からは“手間がかかる”“メリットが感じられない”との声が少なくありませんでした。そこで各部門にヒアリングを行い、独自開発による機能追加を行いながら、課題解決をして普及を進めてきました。」

  • 電子実験ノートBIOVIA Notebookを提供するダッソー・システムズのコメント

「電子実験ノートから一気通貫したデータパイプラインの構築は、日本におけるデータ駆動型研究開発実現の先進的事例となっています。国内の化学分野においてトップクラスのID導入数を誇る昭和電工様に、私どものソリューションをご提供することで、今後もこのMIプロジェクトに貢献していきます。」

オンラインイベントにて講演予定

当社の取り組みについて、ダッソー・システムズが主催する、BIOVIA製品ユーザー向けオンラインイベントBIOVIA USER GROUP MEETING JAPAN 2022にて講演予定です。

講演予定

  • 講演日時:2022年11月9日(水) 16:05-16:30
  • 講演テーマ:昭和電工における電子実験ノート活用のご紹介
  • 聴講には事前登録が必要です

当社は今後も計算科学・MI・AIの活用に注力して、材料開発の迅速化を図り、時代が求める機能をいち早く創出し、社会に貢献していきます。

以上

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ブランド・コミュニケーション部 広報グループ