第2回 光はどうやって測ればいいの?

No.2

第2回 光はどうやって測ればいいの?

SAKIとアグリは、ある植物工場の見学をしています。

図1
  • SAKI

    この植物工場は、LED栽培区(写真奥)と蛍光灯栽培区(写真手前)の両方があるんだよ。

  • アグリ

    あれ?LED栽培区の棚のLEDの光は、蛍光灯よりずいぶん暗くない?照度計で測ってみよう。
    LED赤青同時照射は1000ルクス、蛍光灯は8000ルクス。蛍光灯のほうがずっと明るいね!
    何でLEDは暗いのに植物が育つんだろう?

  • SAKI

    ちょっと待って!そもそも植物工場の栽培面の光をルクスで測ろうっていうのが間違ってるよ。

  • アグリ

    ええっ?照度計で何ルクスか測れば良いんじゃないの?

  • SAKI

    栽培面の光を光量子計を使って光合成光量子束密度という単位で測るのが最も適切と言われているよ。

  • アグリ

    ルクスとかルーメンといった単位のほうがよく聞くけど、それらとは違うの?

  • SAKI

    全く違う単位だよ。ルクスとかルーメンは、人間の目によって知覚される光の量を 測定する単位だよ。

  • アグリ

    この前植物の目と人間の目は違うって勉強したなあ。たしか人間の目は緑に一番感度が高いんだよね。

  • SAKI

    よく覚えていたね。ルクスやルーメンといった単位で測ると、人間の目は緑に一番感度が高いといった補正が入っているんだよ。

  • アグリ

    植物は人間の目と違うから、植物を栽培するための光を人間の目の感度に補正して測るのはナンセンスだね。

  • SAKI

    その通り!先生、もっと詳しく教えて下さい~!

図2

光量子計

光の単位

一般財団法人社会開発研究センター 森 康裕

まず、光の単位(照度と光合成光量子束密度)の説明をする前に、1回目の復習も兼ねて、植物と人間の光の感じ方の違いを思いだしてください。人間は緑(555nm)に一番感度が高く、緑色の波長成分が多いほど明るく感じるということでした。

人間生活の明るさに関する単位として良く使用される、照度(ルクス)、光束(ルーメン)、光度(カンデラ)も、人間が感じる明るさの感覚に近づけるために補正されています。ですから、種々の波長の単色LED光を照度計で測定すると、緑色LEDの照度は、赤色LEDや青色LEDにくらべて高い数値を示すわけです。

一方、植物は、光の粒子を単位としてクロロフィル等の光受容体が吸収しており、特に赤色と青色の波長の光を吸収します。緑色の光の吸収は一番小さいのです。ですから、植物栽培をする際に照度を基準にして栽培試験をすると、光環境の違いによる生育判断が非常に難しくなります。

そこで、植物工場の現場では、光量子計といわれる測定装置で400nmから700nmまでの波長領域で、1秒あたり、1平方メーターあたりの光量子の数を測定し、光合成光量子束密度(以下PPFD)で記述します。このように、人間生活にとっての照明と植物栽培用に最適な照明の波長が異なる事から、光環境を評価する単位系も異なっているのです。つまり、今回の測定結果は測定装置が間違っているわけではないのです。照度が高いからといって、必ずしもPPFDが高くなる事はないのです。逆に、照度が低くてもPPFDが高くなる事は、当然起こります。

光形態形成は、光受容体という色素タンパク質が特定の波長の光を感知して適応するために起こる反応です。代表的な光受容体にはフィトクローム、クリプトクローム、フォトトロピンの3種類があります(図3)。

しかしながら、このような誤解は、植物工場の現場では一般的に発生しています。施設園芸の関係者は、古くから照度を基準に栽培されている方がいまだに多く、そのような方が植物工場の運営を検討される場合に、赤色LEDは照度が低くて、栽培できるわけがないと思い込まれている現状があります。ですから、植物工場用光源を導入する際には、光合成光量子束密度で比較検討しないとならない理由を説明すべきであると感じます。

LED光源の照度とPPFDの関係

 PPFD照度
赤色(660nm) 100μmol・m-2・s-1 約1,000 lx
青色(450nm) 100μmol・m-2・s-1 約800 lx
赤青同時照射(3:1) 100μmol・m-2・s-1 約1,000 lx
蛍光灯 100μmol・m-2・s-1 約8,000 lx

上表は光源のPPFDを100μmol・m-2・s-1に固定して照度を測定してものです。一番わかりやすい例として、赤色LEDは、蛍光灯と比較して植物の目では、同じ100μmol・m-2・s-1に見えていても、人間の目には、1/8の光量に見えています。つまり、人間の目には、非常に暗く見えるわけです。

次に単位で注意しないとならない事は、光合成光量子束密度とは、400nmから700nmまでの光合成に有効と言われている波長領域での光量子の数を測定しているのですが、最近では730nmの植物生育への影響に注目している灯具も増えています。そのような灯具と比較する場合には、現在、販売されているほとんどの光量子計で正確に測定できません。つまり、光量子計では光量測定はできていないということです。

これは、赤色と青色単色のLED灯具と遠赤色の波長成分が入った灯具で生育比較した場合に、遠赤色光を入れた方が生育が非常に良いと誤解しやすいのです。光量子量をそろえた上で比較するならば良いのですが、光量子量が多い灯具と少ない灯具では、公平とはいえません。680nmより長波長の単色光と短波長の単色光を同時に照射すると、別々に照射したときの光合成速度の和よりも大きくなるという現象をエマーソン効果といいます。まして、730nmと660nmを同時に照射するとエマーソン効果が働く可能性も否定できません。遠赤色光の波長を含む灯具と比較を行う場合には、放射照度計といわれる照明関係で用いられている単位(W/m2)で測定して、そこから光量子量に変換して公平に比較すべきでしょう。

森 康裕(もり やすひろ)先生のご略歴

2003年東海大学大学院理学研究科博士課程後期修了。理学博士。
2003年4月~2011年3月まで東海大学理学部非常勤講師。
2011年4月~2014年10月まで(株)植物工場開発取締役。
現在、一般財団法人社会開発研究センター主任研究員。
主な著書「LED植物工場」(共著)(日刊工業新聞社)2011年1月27日発行
「LED植物工場の立ち上げ方・進め方」(共著)(日刊工業新聞社)2013年4月25日発行

SAKIちゃんの独り言

人間の目には明るく見える光であっても、植物にとっては実はそうでもない場合があるということがわかりました。植物は赤と青の光を吸収しやすいんだね。

LEDは、蛍光灯よりも電気代が安いってよく聞くし、植物工場では赤青LEDを使ったほうが効率良く栽培できそうな気がするなぁ。 どの光源を使って、どのように育てたらいいのか、これから一緒にもっと勉強していこうね!

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